大学講義レポート|食 × 農 × 教育 × 地域
旅先の「おいしい」を、
地域の未来を考える入口に。
一皿の料理の向こうには、土があり、つくる人がいて、その土地の暮らしがある。食べる体験を、社会を見る視点へと広げる講義を行いました。
中村学園大学の「アジアの食文化事情」に、合同会社食養メディア代表・食養ファーマーズアカデミー校長の外薗明博(ぞの先生)がゲスト講師として登壇しました。
今回のテーマは、食と街歩きの旅をつくること。そして、旅の食体験を、自分の企画に変えること。
台湾・台南、タイ・バンコク、韓国・釜山、マレーシア・クアラルンプールでの実体験を入り口に、山形県高畠町や北九州市小倉南区・堀越の地域づくりへと、視点を広げました。
アジア4都市を、同じ視点で見比べる
海外で出会う料理には、その土地ならではの食材、調理法、食べ方があります。さらに目を向けると、市場での買い物や、人が集まる場所にも、暮らしの特徴が表れています。
講義では、訪れた4都市の食と市場を紹介しながら、日本の食文化との共通点や違いを考えました。
| 都市 | 講義で紹介した食体験 | 観察する視点 |
|---|---|---|
| 台湾・台南 | おでん、豆花、生姜と小籠包、地元市場 | 屋台、薬味、豆類の食べ方 |
| タイ・バンコク | タイすき鍋、香辛料料理、地元市場 | 鍋の囲み方、たれ、香り |
| 韓国・釜山 | 辛い麺、地元市場 | 麺料理と買い物の場 |
| マレーシア・クアラルンプール | 香辛料料理、地元市場 | 多様な食材、食べる条件、材料の伝え方 |
この比較は、一度の旅で国全体の食文化を語るためのものではありません。実際に訪れた場所での体験を手がかりに、違いの背景を考えるための比較です。
なぜ、この食材を使うのか。なぜ、この場所に人が集まるのか。日本では、どのように食べているだろうか。問いを持つことで、旅先の風景が学びに変わっていきます。
食べ物・街・農・人をつなぐ
食の旅を企画するとき、考えたいのは料理の魅力に加えて、その料理を支える仕組みです。今回は、次の4つの視点を大切にしました。
- 食べ物:何を、どう調理し、どう食べるか。
- 街:市場・店・路地は、どんな役割を持つか。
- 農:材料は、どこから、誰が届けるか。
- 人:誰が働き、誰と食べ、誰へ伝えるか。
たとえば、市場で野菜を買い、地域の人から料理を教わる体験なら、買い物と調理と対話が一つにつながります。生産者の話を聞いてから食べる一皿には、つくり手の工夫や、その土地への理解も重なっていきます。
食体験を企画することは、参加者と地域の接点を設計すること。誰に、何を感じてもらい、その後にどのような関わりを残したいのか。そこまで考えると、旅の企画は、より具体的になります。
海外で得た視点を、日本の農村へ
後半は、山形県高畠町での地域づくりや、北九州・堀越で進める食と農の学びへ。海外の食文化を見つめた視点を、日本の地域に向け直しました。
農村には、畑、季節の料理、受け継がれてきた知恵、人と人とのつながりがあります。地域で暮らす人にとっての日常が、訪れる人にとっては、暮らしを見つめ直す体験になることがあります。
その価値を、地域の人たちと一緒に、どう学びや体験として形にするか。人口減少や担い手不足に向き合ううえでも、考えていきたいテーマです。
講義で紹介したのは、「大都市から、暮らしを学ぶ滞在へ」という発想です。地域を訪れ、そこで食べ、育てる人と出会い、暮らしに触れる。その経験が、再訪や学び、地域活動への参加につながる可能性があります。
企画を考えるときには、訪れる人の満足とともに、受け入れる地域の負担や、続けられる運営の仕組みにも目を向けることが大切です。
自分なら、どんな旅と地域の未来をつくるか
学生の皆さんには、紹介した事例を、自分の関心や経験と結びつけながら考えてもらいました。
企画を考えるときに、大切にしたい問い
- 誰に、どんな食体験を届けたいか。
- その体験を通じて、地域の何を知ってほしいか。
- 農家、料理人、住民など、誰と一緒につくるか。
- 地域の人たちにも、どんな価値が残るか。
- 自分自身は、どのような役割で関われるか。
自分が面白いと思ったことを、誰かにとっての価値へと育てる。そのために観察し、問いを立て、言葉にしてみることが、企画づくりの第一歩になります。
学びを、食卓と暮らしの実践へ
市場で食材の産地を確かめる。地域の料理について聞いてみる。畑で作物が育つ過程に触れる。食と農への関わりは、身近な一歩から始められます。
私自身も、国際協力、教育、地域づくり、経営の現場を歩みながら、食と農が人と地域をつなぐ可能性を考え、実践してきました。大学での講義も、北九州・堀越での学び場づくりも、その延長線上にあります。
食べることから、地域が見える。
育てることから、
自分の暮らしが変わり始める。
講義に参加してくださった学生の皆さん、そして、この機会をつくってくださった先生方に、心より感謝申し上げます。
大学・学校・自治体・企業の皆さまへ
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食育・農育、フードツーリズム、地域共創、国際協力経験を活かしたキャリアなどをテーマに、現場の事例と問いを組み合わせた講演・研修をご相談いただけます。
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